ふだん、団子とか、まんじゅうとか売っとって、夏になると、かき氷売っとる和菓子屋さんが地元にある。そこのかき氷、ふわふわしとるから、１個７００円とか８００円とか、けっこういい値段とっとるんだけど、行列できとるし、テレビの取材とかもきとるし、パートのおばちゃんとか話とると、みんな知っとった。ボクも夏になると毎年２、３回は食べに行っとるし、かき氷屋さんの前とおるといつも忙しくしとるから、儲かっとるって、まぁ、だれが見たって見とればわかる。

そんな光景とか毎年見とると、コンビニって人集まるし、だったらかき氷屋さんやって、億万長者になろうって、前々からそう思っとったんだけど、そもそもかき氷機持っとらんから買わんといけんし、毎年毎年やろうと思っとっても、そのうちお盆が来て、だんだん９月になって、とうとう今年もかき氷ができませんでしたって、そんな感じになっとった。

だから、今年もできませんでしたってならんうちに、６月の早い時分から、かき氷機買って準備しとった。だけど、ふわふわのかき氷やるのに、機械とか、なんだかんだで１０万円くらいかかってしまって、さすがに１０万円とかかなりヤバかったんだけど、はじめれば、かき氷長者になるって決まっとるから、今は仕方ねって、いい聞かせとった。

ふわふわのかき氷作るの、見とるのと、実際にやっとるのとでは、ぜんぜん感じが違うって、やっとるのを見とると簡単そうなんだけど、実際にやっとるとガリガリ君みたいになってしまって、パートのおばちゃんたちぜんぜんできなくて、教えるのに２週間以上もかかってしまった。その間、失敗したかき氷を、もったいないって、ボクも一緒になって食べとったから、カラダが冷えたんだか寒いし、なんだかイライラしてみたり、やる気もなくなったりして、とにかく具合が悪くなって自律神経でもやられたとか思って、もみ医者に３回も行ってきた。

まぁ、新しいのやるのに、いろいろあって大変だったけど、なんとか、おばちゃんたちもできるようになって、かき氷やりはじめたのが７月に入ってからだった。

それで、ＰＯＰとか装飾だとか結構やったつもりなんだけど、これがまた、ぜんぜん売れてない。もみ医者に行くぐらいあんなに頑張ったんだけど、ぜんぜん売れてない。今は夏休みだっていうのに、ぜんぜん売れてない。１０万円も使ってかき氷屋はじめたのに、ぜんぜん売れてない。困っとる。

かき氷やるって発表したとき、余計な仕事ができたって、パートのおばちゃんたちにイヤな顔とかされたんだけど、かき氷売るかわりに、おばちゃんたちには毎日タダでかき氷食ってもいいってことにしたら、おばちゃんたち嬉しがって、なんとかかき氷屋をはじめられた。

でも、結局かき氷売れてないから、余計な仕事も増えてなくて、一番嬉しがってるのがパートのおばちゃんたちだった。今日も暑いのにかき氷がぜんぜん売れてない。でも、おばちゃんたちは、あたりまえのようにかき氷を食べていた。